Jリーグ本て売れないらしい。

話題になった中村慎太郎氏の著書も売り上げでは苦戦しているらしいし。
サッカー本てちょこちょこでてるからニッチな需要があるのかなと
思ってたけど、現実は厳しい。

エルゴラでそこらへん記事になったらしいので(すいません未見です)
ちょっと自分の書棚に並んでる関連本を紹介してみたい。

で、一冊目が、武藤泰明著 「プロスポーツクラブのマネジメント」。



今書店にあるのは第2版の改訂版で、僕の手元にあるのが
2006年に出た改定前のものだけれど、その帯には、

「JリーグGM講座のテキスト、待望の書籍化。実務者必携の書」

とある。クラブ側がどういう考えでマネジメントしてるのかってを知れるし
サポーターが読むと楽しめると思うんだけれど、
あんまり話題になってる風でもない。

まあこれをJリーグ本に関連付けていいのかはわからない(たぶん違う)。
4104円もするし。

章立てを見ると、

1…法人格とガバナンス
2…財務
3…選手・移籍・代理人
4…クラブチームの組織と人事
5…マーケティング
6…無体財産のマネジメント

で、値段といい内容と言いもろ経営学のテキストなんだけど、
サポーターに関することなんかは興味深い。
(回数券の会計処理上の問題、とかもおもしろいけど)

「サポーターはクラブチームにとって、重要なステイクホルダーとなっている例が
実際に見られる。

・・・一方、少なくとも平均像としては、サポーターはチーム運営の
専門家ではないし、マネジメントに長けているわけでもない。

・・・事業会社との比較で言えば、クラブチームにとってのサポーターとは、
企業の製品やサービスを熱烈に支持しているユーザーに例えるべき存在」

といい、したがって彼らにマネジメントをゆだねることはありえないが、
企業は熱心なユーザーの要望に対して耳を傾ける、とする。
その理由は、

「①ヘビーユーザーが企業の安定的な収益に貢献している。
 ②ヘビーユーザーのライフスタイル、製品購買行動、利用行動が、フォロワー層の
  ベンチマークとなる」

からであり、サッカーに例えると、

「①ファンクラブへの加入、シーズンシートの購入によって収益基盤となる
 ②サポーターとしてのライフスタイルを体現することによって、サポーター予備軍に
 対して、サポーターであることの素晴らしさを示す存在である」

とする。
(著者はこの2点は経済合理性の観点でありサポーターをこれで片づけてはならないとしている)
いま応援でいろいろ課題がでてきているけど、②のサポーターであることの素晴らしさを示す、
というところで、齟齬ができてきているのかもしれない。

しかしながら、

「サポーターはサポーターとして、独自のサブカルチャーを持ち得る主体である。
それが数人の集まりということもあるが、大きな組織になる場合も見られる。

そして大きなサポーター組織は独自の価値観を持ち、組織の拡大を指向し、
クラブチームに対して意見を表明する存在ともなる。欧州では、このような
巨大なサポーター組織がクラブチームの運営に関与する例が見られる。

重要なのは、このようなサポーターの活動が一種のサブカルチャーであり、
クラブチームの意思とは半ば独立しているという点である。その情熱は、
クラブチームにとって価値のあるものになり得る。逆にクラブチームの運営を
阻害することもあるだろうし、そのような場合でもサポーターの主張が理にかなっている
ということがある。

 意思決定や合意は、必ずしも択一的であるとは限らない。サポーターの意思と
クラブチームの位置が同じではないとしても、サポーターという社会文化的な
インフラの上にクラブチームが成立しているのは事実であり、またそれ故に
クラブチームとは価値合理性を追求することを使命とする」

とし、サポーターの価値を評価している。

また顧客満足の要因として、応援が華やかである、という点も挙げられており、
試合の価値の一部として評価もされている。

サポーターは、すぐに社長やめろとか言っちゃうけれど、
社長もいろいろ考えている、はずだな、と思える一冊。

サポーターも読んでいいんじゃないかな、と思います。
(どこを目指してるんだと言われなくもないけど)