実直。
サンフレッチェ広島監督森保さんの印象ったらそんな感じ。
真面目っていうか。

レッズに選手を引き抜かれても、それだけうちの選手が評価されてる証拠、
とコメントする男。
0円移籍でクラブにお金が入らないのは困りますけどね、と皮肉も言う男。

そんな森保さんが本を出した。
タイトルは「プロサッカー監督の仕事 非カリスマ型マネジメントの極意」。



本書の中にも、試合終了後は戦術的な話は分析されるので語らない、
と述べられているが、それはそのまんまこの本にも当てはまる。
あの場面で自分はどう声をかけたか、コーチとはどう接しているか、など、
どうやって人を成長させるか、組織をうまく作るか、
いかにそのための働きかけをしているか、
ということの記述に力を注いでいるのである。

新・人間力、とでも呼びたいくらいだ。

他サポとしては、あの試合の後、と言われてもピンとこないので、
そういうことがあったのね、と思う程度。サンフレッチェを追いかけてる人なら
膝を打つのかもしれないので、必読の書に間違いないのだけれど。

ただ最初に語られるエピソード、森崎浩司に、

「シュートを打つとき後ろから追いかけられたどう思う?」

と問う場面。森崎は「プレッシャーがかかって嫌だ」と答え、
だから抜かれてもくらいついて、FWに気配を、足音を聞かせて
少しでもプレッシャーをかけろ。それが相手のミスにつながるかもしれない。
だからそれを徹底しよう、というところには、森保さんの哲学が出てるのかもしれない。

ハードワークとか泥臭く、とかいうけれど、苦しい場面で最後の一歩が出ないことがよくある。
抜かれて一瞬時が止まったようなシーンを見たことだってあるけど、
そこでがんばれるか、ってのが大事なんだってことをあらためて教えてくれる本書。
サポーターとしては、その最後の一歩を踏み出させるのは自分たちの声なんだ、
と言いたいところだけれど、やっぱり選手の皆さんには頑張ってもらいたいですね。
森保さんに言わせるとそれがプロ、ということらしいので。

しかし本を書いても戦術を明かさない森保さんこそが、真の策士なのかもしれないですね。

※なお、著者印税は広島豪雨災害の義援金に使われるそうです。