こんな国滅ぼしましょう、原発で。

先の都知事選で外山恒一はこんな街宣をしながら都内を回った。

そのあとに、

私たちはテロリストです。格好の標的をいつまでも残してくれる、
原発推進派を勝手に応援 しています。デストロイ・ジャパン」


と続けて。参議院選挙でもこれをやって、一部でずいぶんと話題になっていた。

推進派であろうと反対派であろうと急にこんな言葉が聞こえ来たら
何かしら波紋が残るだろう。

日常生活を非日常に。

選挙でおもしろいのは外山だけ、結果はわかってるしなぁ、なんて思って、
でもそれはそれでまずいよね、と思ったのは記憶にある。

確かに、マック赤坂さんは面白いんだけど。
いや、面白いんだけどね・・・ 面白いだけでは…

マック赤坂、羽柴誠三秀吉、外山恒一。
負けるとわかっていながら選挙に出る、
いわゆる「泡沫候補」に迫った映画「立候補」の監督の著書、
「泡沫候補」を読んだ。


2011年の大阪府知事、市長のW選挙。
マック赤坂さんは府知事選に出る。理由は、読んでもよくわからない。

しかし、パワーはすごい。圧倒的。過剰。
そのパワーを他に使えば、そんな意見はこの人にはあたらない。

京大から伊藤忠、独立してレアメタルの専門商社で成功。
その専門性、見識をいかせば、普通にやれば通りそうだが、
たぶんそれでは収まらない人なんだろう。
でもなぜ踊るのだろうか。

「選挙初日、聴衆が誰もいなかった。大阪府庁での第一声のあと、
マック氏はロールス・ロイスに乗って梅田へ移動した。梅田の街頭でも
少し踊った。やはり誰も立ち止まらなかった。次に通天閣に登り、
天王寺のティップネスでエアロビクスを踊ろうとしたが閉まっていたので、
大浴場へ行って風呂に入った。夜は難波の街頭で一時間ほど踊って、
その日の活動は終わった。」

思わず引用してしまったが、ここには詩が、文学があると思った。
不完全で純粋、というか。

誰もが羨む経歴の成功者である初老の男が、誰からも理解されない方法で選挙に臨む。
普通の方法ではたどり着けない場所に行くため、普通ではないやり方で戦っている。

そしてそれはおそらく間違っているが、間違えなければたどり着けない方が
狂っているのでは、そんな気にさせるのである。

マックさん以外の「泡沫候補」、外山氏は確信犯的だから除いても、
羽柴氏も、その他候補者も思いのほかマジメ。
羽柴氏は事業に成功してるし、他の人も学歴エリートで教師だったり
公務員だったり。そして皆なにがしかの思いがある。
伊達に供託金300万払って選挙に出ていない。

無論、美しい話ばかりではなく、大阪府知事選の演説を
京大の前でやろうとして実行委員会の女子と口論。
公選法違反だぞ、就職できなくなるぞ、と恫喝する場面や、
(公職選挙法では演説の場所を定めていないためどこでやってもよい、
 というか選挙区域外の活動を想定していない。)
ちょっと近くにいると困るだろうなと思うけど、
そう思いながらもマックさんの息子は父のことを許容していて、
なんだかよくわからないけれどちょっといい話になってしまうところは、
本書の良さなのかもしれない。

本書は、選挙に、政治に諦めがちな人に特にお勧めしたい。
ここには少なくとも本気がある。
やり方は、それぞれが試せばよいのだ。